病医院の戦略的経営計画

人間ドック事業の立ち上げについて

4.むすび

 以上、概観したように人間ドックマーケットへの新規参入は病医院の財政への直接的即効的カンフル剤となることは期待できない。しかしながら筆者は医業経営コンサルタントの立場として、新規事業としての人間ドック事業への早期の参入を推奨する立場をとる。各保険者の保健予防事業への投資拡大、国民の健康管理意識の向上、医療政策での「国民医療費の削減」の至上命題といった要素は健康増進事業マーケットの今後の更なる拡大を示しているからである。重要なことは、事業として推進するに足る経営管理者の主体的な目的意識の有無であろう。前章で述べたことを考慮して計画立案すれば、人間ドック事業への参入は十分に収益確保となり得るのである。
 医療機関を取り巻く経営環境は相変わらず厳しい。この状況は病医院にとって首をすくめて待っていれば回復する性質のものでは絶対にあり得ない。崇高な経営理念、そして存続理念を持ち続ける病医院がこの困難な状況を乗りきろうと真剣に模索しているならば、筆者は、医業経営コンサルタントとしての我が身のすべてを捧げることを惜しまず、その決意を新たにする次第である。

<参考文献>
・広井良典「医療の経済学」 日本経済新聞社
・池上直己 JCキャンベル「日本の医療」   中公新書
・日経産業新聞編「医療ビジネス新時代」
・内山久男「人間ドックの経営戦略ポイント50」 日本医療企画
・萩原哲夫「人間ドック事業の立ち上げ方」  日経ヘルスケア1995 12月号
・ダイヤモンドハーバードビジネス編 「ベンチマーキングの理論と実践」 ダイヤモンド社
・今田彰「医業経営多角化のチェックポイント50」日本医療企画
・高梨・吉田訳「企業戦略マニュアル」   ダイヤモンド社